漢方のお話

院長コラム

003 生薬のこと

院長 森合 重誉漢方薬は生薬を複数、組み合わせたものです。生薬とは自然界に存在する植物、動物、鉱物由来のもので、古代から薬効が確認されているもののことです。生薬を複数組み合わせると効果の増強や副作用の軽減が得られます。試行錯誤の結果、様々な症状に細やかに対応できる、多くの薬が生み出されてきたわけです。古代中国における農耕と薬の祖、神農神が有用な生薬を見つけるべく「毎日吐いたり下したり」という伝説もあるように、その情報の蓄積にかかった時間と労力は大変なものだったろうと思います。

生薬を1種類追加するだけでガラッと性質が変わり、適応疾病が増えたりもします。現在使われてる処方は長年、投与されることで効果と安全性が確認されたもので、淘汰されずに生き残った、優秀な組み合わせと言えます。個々の症例の情報が蓄積され、知識体系に育ったと考えられます.試したら有効→同じ病態に使用してみよう→繰り返し効果が確認という経過。いわば大量の臨床治験を経たものが、今使われている処方です。繰り返し実証されてきたものはきちんと理屈がある、科学といって良いと考えます。なお生薬は産地が異なると土壌も異なり、育つ草木にも違いが出ます。生成した生薬にも何らかの違いがおそらくあり、同じ名称の漢方薬でもメーカーが異なると効果に違いが出ることがあります。


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