漢方のお話
院長コラム
002 日本漢方のこと
日本の漢方は中医学(=シナの伝統医学)とは異なるものになっています。漢方治療は1800年前のシナ大陸に原典のひとつがありますが、日本へ伝来後、相当な時間をかけ、本邦の気候や植生を基に日本人にアジャストされたものが今の日本漢方。和漢診療(=日本流の漢方治療)とも呼ばれます。日本独自の方剤も多数在り、診断方法も今の中医学とは一線を画すものです。
漢字や仏教、文化が伝来後、長いためらいを経て日本人に咀嚼吸収された経緯と似ています.中医学は理論本位、日本漢方は腹診などの臨床所見から見立て、証を勘案(どんな薬が効きそうか検討)する、治療に直結した医学といえます。
本邦で作られた方剤が近年、シナに逆輸入されているものもあるようです。これも明治時代、西洋の文物が本邦に輸入、翻訳され、留学生を通じてシナに逆輸入された経緯と似ています。中医学の術語を振りかざすと、患者不在の神学論争になりかねない。実地臨床で使える、診断と方剤選択方法を重視するのが日本漢方の特性だと思います。